地味子の秘密*番外編*
「父親への贈り物かって聞かれたから、『彼氏です』って答えたら『年上なんですね』と言われたんだよ?」
杏は、クスクスと笑う
「それでね?『同い年です』って言ったら、ポカンと口開けてた」
その時のことを思い出しているのか、また笑う杏。
「まさか、思わないよね?高校生で、普段からスーツを着ているなんてさ」
「杏が、変なことを言う頭のおかしな子だって思われたかもな?」
ニヤリと、イジワルく微笑んで見せた。
「もうっ!そんなこというなら、あげないよ!」
パッとネクタイを取り返そうとする彼女を交わして、逆に引き寄せる。
「ひゃっ」
バランスを崩した杏が、俺の胸へと倒れこんで来た。
「なにするの~!」
あ、怒った。
離れようとする杏を、しっかりと抱きしめて、耳元で問いかける。
「なんでチョコだけじゃなくて、ネクタイまでくれたんだ?」
バレンタインだから、チョコだけでもうれしいのに。
どうしてネクタイまで?
耳元で話しかけられるのに弱い杏は、途端に大人しくなった。
「だ、だって……」
ほら、こんな風にな?
――ちゅっ
「きゃあ!」
頬に口づけると、かわいい反応をする。
杏の顔がリンゴだ。
「杏、なんで?」
さらに、耳に口を寄せて、囁くように問いかけた。
「だって、去年1番心配かけて、迷惑かけたのは陸だし……あたしのせいで誕生日も、クリスマスも散々だったから……。そのお詫びっていうか、いつもありがとうっていうか、もう……いっぱいあったからあげたの!」
顔はリンゴのまま、最後は早口で恥ずかしそうに答える。
そのまま、俺の胸に顔をうずめた。