地味子の秘密*番外編*
「いただきま~す♡」
「ま、待て杏!」
俺がそう言うのよりも、杏がトリュフを口に入れる方が早かった。
忘れていた。
このトリュフが、他のモノに比べて……数十倍の濃度の高い洋酒が、入っていたことを―――……。
「杏!?大丈夫か!?」
すぐに、他のトリュフが入った箱を取り上げて、顔を覗き込む。
しかし。
「キャハハハハ!どーしたの陸しゃん?」
遅かった―――。
目の前には、やたらとテンションの高い杏。
頬をピンク色に染めて、目を潤ませている。
「ね~?チョコはぁ~?」
「もうダメだ。食べるな」
「なんで~?キャハハ!ちょーだい?」
顔を横に傾げて、上目遣いでお願いされた。
だ、ダメだ。杏にこれ以上やったら……。
つーか、ホントにチョコひとつでこうなるんだな。
ある意味、感心してしまう。
コイツは高1の時、パーティで誤って酒を飲んでしまい、酔った。
それも、たったカクテルグラスに入っていた少量で。
その時は、もう地獄だった。
なぜなら―――……。