地味子の秘密*番外編*
は?

振り向いて、声の主を見る。

栗色の長い髪。

ふたつ結びにしている。

顔立ちは、抜群に整っていて……一瞬、アイドルのヤツかと思うくらいに、美少女。

俺の目の前にいる女と同じセーラー服を着ている。


「うん!」


ニコニコ笑顔で、その美少女に返事をする地味女。

連れか……。


「なら帰ろうよ!今日の晩ご飯作るんでしょ?」

「あ!そうだった!」


美少女の言葉に、ヤバいという顔をする女。


「お金払ってくるから、入り口で待ってて!」


そう美少女に言うと、俺のそばを通り過ぎ、パタパタと駆けて行く。


文庫本のコーナーには、俺だけが取り残された。


「なんだ?変な女……」


地味女が走って行った方を眺める。


すると、


――パタパタッ

「あ、あのっ!」


え?


数分もしないうちに、本屋の袋を持ったさっきの地味女が俺のところへ戻ってきた。


ホントに、予想外な行動をするヤツだな……。

どうやら支払いを済ませて、ここに来たらしい。


「なにかな?」


満面の笑みを浮かべて、女を見た。


ここまですれば、「さすがに頬を染める」と思っていたのだけど、コイツは、変わらない表情で続ける。


「本、ありがとうございました!ずっと探してて。これくらいしかお礼できないけど……」


そう言って、差し出された女の手。

なにかが握られている様子。

ケータイの番号とかが書かれたメモだよな。

『メールしてね』とかじゃ?

まぁ、もらっておこう。

そう思って、手のひらを出す。


――コロン……


え?

だが、手のひらに落とされた感触は、メモとかじゃない。


「飴……?」


そこには、包装された小さなアンズ飴が数個あった。
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