地味子の秘密*番外編*


「じゃあ、ありがとうございました!」


ペコッと頭を下げて、また走り去っていく。

アイツ、これを渡すために戻って来たのか?


「ホント、変な女……」


手のひらにあるアンズ飴を見つめた。


初めて、出会った。

俺の外見に、興味持たなかったヤツ。

あの女は、本のことしか頭になかったようだ。

俺を見ても、他の女たちのように態度を変えることもなく、自然で。

飾りっ気なんてなくて……キスマークすら知らないくらいに純粋で。


いるんだ。

本当に、そんな女って。


あの地味女ならば、本当に連絡先が欲しかったかも。

いい友達になれたかもしれないからな。



俺に媚を売らない女がいる。



それを知った俺は、その日を境に、女遊びをやめた。

学校の養護教諭に誘われても、女に逆ナンされても、ヤらなくなった。

ケータイも変えて、今まで遊んだ女たちと縁を切った。


このことに一番驚いていたのは、咲姉。


「陸、アンタ頭おかしくなった?」


こんなことをしばしば言われたけど、それでも、一切遊ぶことはなかった。


あのアンズ飴は、大事に机の奥にしまってある。


俺が変われた大事なお守りだから。



けど、それ以降、一度もあの女に会うことはなかった。

髪の毛で隠れていたから、顔さえも覚えていなくて。

半年も経った頃には、声さえも忘れていた。


だけど、あのみつ編みだけは忘れられなくて……。

だからか、俺は地味でも、みつ編みをしている女が嫌いじゃなかった。

キレイに巻かれた髪より、みつ編みの方がいいなと思ったり……。



みつ編みで、俺に媚を売らない女。

もし、もっと言うなら、霊感のあるヤツがいい。



この頃から、タイプの女が決まっていたのかもしれない。
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