地味子の秘密*番外編*
そして、高校入学後―――。


「陸くぅ~ん!」

「陸様ぁ~」


中学の時と変わらない女たちに囲まれて、ウンザリし始めた頃。


「そーいえば……あなた名前なんて言うの?」


実家が陰陽師だという女に出会った。

『霊力があればいいな』なんて願望は、とっくに超えて、俺よりも数倍力の強い子だった。

地味子で、みつ編みをしていて。

俺に媚を売ることもない。


俺のタイプのドストライク。


自然体で、クルクルと変わる彼女の表情を見ているのが楽しかった。



ただ誤算は―――。


「ふーんだ!どーせ、あたしはブスですよ!」


地味子の変装をほどいた彼女は、誰もを魅了するほどの絶世の美少女だったこと。

そして、恐ろしいほどに、自分の容姿に対して自覚がなかったこと。


彼女を見つけた俺だけが、ひとり占めをしたかったのに、そうはいかなかった。



高1の秋。

彼女の素顔が知られ、人気は瞬く間に上がった。


「神崎さんってマジかわいいよな」

「天然だし、ちょっと抜けてるトコとか、守ってやりたいんだよな」

「ホントホント、でも、あのスタイルだし!」

「1回くらいベッドで鳴かせてみてぇかも!」


教室に居ても、男たちの会話に必ず出てきていた。



お前は知らないだろ?

俺がどんなに内心ひやひやしていたか。

何度、お前の教室に行って、「俺のだから手ェ出すな」って言いたくなったか。




学園中に俺たちの交際が知られるまで、心休まる時なんてなかったことを。


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