地味子の秘密*番外編*
「陸、お前がこんなになるなんて、神崎さんとケンカでもしたのか?」
さんざん、俺を笑った後、ふと、悠が尋ねてくる。
どうやら、おちょくっているのに、俺が反抗しなかったからのようだ。
「え? 杏樹のこと泣かせたの?」
今までの笑顔が一転。
松沢の声に険が宿った。
……泣かせてはないよな?
いや、陰では泣かせているかも……。
グルグルとそんなことを考えていたら、
「鉈で、男の大事なところ……切り落とすわよ?」
恐ろしい言葉が聞こえる。
――パッ
「い、いや! 泣かせてねーから!!」
慌てて顔を机から上げ、否定した。
「ふ~ん? じゃあ、何かあったの?」
そう言って、俺を見下ろす松沢が、なぜか鬼に見えてくる。
頭のてっぺんには、2本の角が生えているような気がした。
杏が以前。
『柚莉は怒ったら、鬼になっちゃうんだよ!』と、言っていたことを思い出す。
たしかに、そうかもしれない……。
そこで、ポツリポツリと、先月からの出来事を話した。