地味子の秘密*番外編*
改めて、アイツが特殊能力を持つ人間なのだと実感した。

「それで、杏樹が合コンに参加しているのは知ってるのか?」

「さっきメールで知った」

そう答えると、奴はさらに難しい顔をする。

「早く行け。合コンの相手は、ヤバイぞ。今まで、ヤツらに喰われた女は大勢いる」

「は……?」

なんだって? 喰われる?

「どういうことだ」

相手は、妖怪。

それも、結構長生きしてるようだから……偉いやつなんだろうけど。

そんなの、杏のことになったら俺には関係ない。

敬語とか一切使わずに、ドスのきいた声で問いただした。

「薬を使い、ホテルなどに無理やり連れ込んでいる」

「あ?」

「手遅れになる前に、さっさと行け! ワシは伝えたからな!」

それだけ言うと、妖怪の鳥はバサバサと翼を動かし、飛び去って行った。

マジ? 合コンの相手が、そんなにヤバいヤツなわけ?

「まったく、あのバカ娘が」

窓のブラインドを下ろし、ケータイで北原に電話を掛ける。

なんで杏は、いつもこんな危ないことに首を突っ込むのだろう?

ホント、俺は毎回気が気じゃないんだけど。

なんて思いながら……北原に用件を告げた。





――藤鷹高校ピアス男side――

女全員がトイレに行ったのを見計らって、俺たちは話し始める。

「おい、お前らターゲット決めたのか? 俺、絶対に杏樹とかいうやつだからな!!」

俺は、黒髪の美少女を指名しながら、まわりに問いかけた。

「俺、ポニーテールの子!」

スポーツマンタイプのユウジがニヤニヤと笑って言う。

「んじゃ、俺、みずきちゃん」

フレームなしのメガネをかけたインテリ系のトウマがケータイをいじりながら言った。

「俺どっすかな。中村ってヤツにするか」

またひとり、ターゲットの名前を言う俺様系のユウキ。

「え~? マジ? 俺も、杏樹ちゃんがよかったのに!」

俺と似たような感じのタケシ不満そうに言う。

「ダメ。アイツはぜってぇー俺の!」

俺は、ニヤニヤとした目で、アイツの座っている席を眺めた。

俺の手には、小さな瓶が握られている。

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