地味子の秘密*番外編*
――陸side――

隣町の駅前にあるカラオケボックス。

俺は、そこに車を止めさせて、杏樹が出てくるのを待っていた。

車は、会社のもの。

さっき妖怪の奴からの情報で、ここに来たんだ。

なぜ店内に行かないのかって?

そりゃ、今すぐにでも行きたいのだが。


『杏樹様は、男たちのことをご存じだ。今、ワナを自ら仕掛けている』


俺のそばにいた雑鬼が、そう言って来たんだ。

そんなことを言われたら、簡単にはいけないだろ?

杏が今、わかっていて行動をしているというんだから。


つーか、またこんな無茶して。


だから、俺は店の前で待っている。

すると。

松沢の制服を着た女たちが店から出てきた。


「り、陸様?」


ひとりの女が、俺を見て話しかけてくる。

他校の制服を着た女も、まじまじと俺を見ていた。


「中村さんたちだよね? 今日は杏がお世話になりました」


ニッコリと学園用の笑顔を張り付けて、言葉をつづけた。


「あのっ……杏樹ちゃんは……」


説明をしようとしているようだが、「大丈夫だよ」と首を横に振ってみせる。


「話は、全部杏から聞き出すから」と、伝えた。



その時、店の出入り口から、杏が出てくるのが見えた。









そして、その30分後。

俺はこのバカ娘を連れて、会社の社長室に戻ってきていた。




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