地味子の秘密*番外編*
しかし、目が覚めた杏樹は―――……陸のことが見えなくなっていた。
存在のことは覚えていても、姿かたちが全く見えない。
そんな中で、杏樹は陸に別れを告げた。
でも、陸は別れるどころか、『絶対に別れない。お前だけは手放したりしない』と言った。
その頃からだったか……。杏樹が日々ボーっと遠い目をしているようになったのは。
俺が話しかけても、上の空。
メシも食わなくなって、入院2週間でみるみると痩せた。
その2週間は、陸は一度も病室に現れなかった。
別れを承諾したのかと、思っていた矢先―――……。
『ったく。風邪引くだろーが……』
退院間近になって、杏樹のとこに来た。
ソファーでうたた寝をしていた杏樹を軽々と抱き上げて、ベッドに運ぶと愛しいというような目で寝顔を眺め、
『あと3日待ってろ』
そう言って、病室を出て行った。
病室に入ろうとして、陸がいることに気付いた俺は、その場面を入り口のところから見ていた。
陸がいなくなったことを確認して病室に入ると、
『……り……く……陸……』
寝言でヤツを呼ぶ杏樹がいた。
寝ていても、陸を求めている。
アイツが来てくれることを望んでいる。
ベッドに近寄り、杏樹の頭を撫でると、
『陸……いっちゃ……ヤダ……』
俺の指を掴んで、そう言い、わずかに涙を流していた。
その時に悟った。
『コイツが本当に好きなのは、アイツだ』
俺と一緒にいても、コイツの頭の中はヤツのことだけ。
俺を求めてくるのは、近くで自分を見ていてくれる存在だから。
けど、根っこの部分で、コイツは陸を求めている。
『杏、おいで』
そうヤツに腕を広げて言われたら、コイツは迷わず飛び込んでいくはずだ。
杏樹が俺のもとから去るのは、近いかもしれない。
ヤツの名前を呼ぶ杏樹を見て、そう感じた。
存在のことは覚えていても、姿かたちが全く見えない。
そんな中で、杏樹は陸に別れを告げた。
でも、陸は別れるどころか、『絶対に別れない。お前だけは手放したりしない』と言った。
その頃からだったか……。杏樹が日々ボーっと遠い目をしているようになったのは。
俺が話しかけても、上の空。
メシも食わなくなって、入院2週間でみるみると痩せた。
その2週間は、陸は一度も病室に現れなかった。
別れを承諾したのかと、思っていた矢先―――……。
『ったく。風邪引くだろーが……』
退院間近になって、杏樹のとこに来た。
ソファーでうたた寝をしていた杏樹を軽々と抱き上げて、ベッドに運ぶと愛しいというような目で寝顔を眺め、
『あと3日待ってろ』
そう言って、病室を出て行った。
病室に入ろうとして、陸がいることに気付いた俺は、その場面を入り口のところから見ていた。
陸がいなくなったことを確認して病室に入ると、
『……り……く……陸……』
寝言でヤツを呼ぶ杏樹がいた。
寝ていても、陸を求めている。
アイツが来てくれることを望んでいる。
ベッドに近寄り、杏樹の頭を撫でると、
『陸……いっちゃ……ヤダ……』
俺の指を掴んで、そう言い、わずかに涙を流していた。
その時に悟った。
『コイツが本当に好きなのは、アイツだ』
俺と一緒にいても、コイツの頭の中はヤツのことだけ。
俺を求めてくるのは、近くで自分を見ていてくれる存在だから。
けど、根っこの部分で、コイツは陸を求めている。
『杏、おいで』
そうヤツに腕を広げて言われたら、コイツは迷わず飛び込んでいくはずだ。
杏樹が俺のもとから去るのは、近いかもしれない。
ヤツの名前を呼ぶ杏樹を見て、そう感じた。