地味子の秘密*番外編*
◆杏ちゃんにヤキモキを焼かせよう大作戦〜陸〜
――陸side――
これは、俺らが高校2年の時のことである。
俺、滝本陸には彼女がいる。
神崎杏樹。
コイツだ。
学園内外からの別名は……“かぐや姫”。
漆黒のサラサラと流れる長い髪。
透き通るような白い肌。
抜群に整った小さな顔とスタイル。
着物を着せると、本当に昔話の絵本から出てきたような姫に見える。
和の雰囲気を纏う、絶世の美女。
その彼女には、ファンクラブというものが存在している。
だが、杏自体は……その存在を全く知らない。
自分が、男たちにモテているとは露ほども思っていない。
アイツは自分の容姿に無自覚だ。
容姿以外のことでは、学年トップの成績である俺の、次の成績を持ち、語学堪能。
運動神経も良く、たまに『陸、あそぼ!』と言ってスポーツ対決をしたりするが、何でもこなす。
料理の腕は、プロのシェフも認めるほどで、申し分ない。
俺が望めば、ほとんどのことは聞いてくれる。
杏は、他のヤツらからしたら、完璧な女に見えるだろう。
俺でも、そう見えることがあるからな。
でも、アイツにはひとつ……俺が望んでもしてくれないことがある。
それは――――ヤキモチ。