地味子の秘密*番外編*
「なぁ、神崎さんって……妬かないよな?」
梅雨に入った6月の下旬。
教室で、休み時間を過ごしていたところ、悠が話しかけてきた。
「……あぁ」
チラリと悠に視線を向けただけで、そっけなく返す。
そんなこと、言わなくたって、俺が重々知ってるっつーの。
「柚莉とは、正反対だもんね」
「確かに」
松沢の性格を思い出して、頷いて見せた。
松沢は、悠によく妬いているらしい。
コイツは、基本他の女たちにも優しく、分け隔てなく接するからな。
そんな悠に好意を抱いている女たちは多い。
優しそうに見えて、実は武道も出来る。
剣道は、幼少期から習っているから、有段者。
強くて優しい悠は、女子の人気者だ。
それで、松沢はひやひやしっ放しだというのである。
まぁ、コイツらはお互いのことが大好きで、バカップルと有名だ。
「お前は神崎さん大好きだけど、彼女はどうだ?」
悠の一言に、ドキッと心臓が跳ねた。
アイツは……好きではいてくれると思う。
じゃなきゃ、とっくの昔に俺がフラれてるさ。
「……大丈夫なはずだ……」
なんて言いつつも、内心……不安だらけだったりする。
すると、悠がこんな提案をしてきた。
「じゃあさ、神崎さんを妬かせてみないか?」
この言葉が、杏ちゃんにヤキモチを焼かせよう作戦の始まりだった。