地味子の秘密*番外編*
その翌朝。


「……てなわけで、昨日もダメだった」


梅雨時期特有のジメジメとした中、悠と一緒に登校する。

その中で、昨日のことを報告していた。


「うわっ……ドンマイ。柚莉なら妬いちゃって、そういう日は、俺にベッタリ甘えてくるんだけどなぁ~」


はいはい、ウチの彼女とは大違い。

軽く悠のノロケを聞いて、また気分が落ち込んだ。

昨日、結局あの後あったけど、『またコクられてたね。今月何人目?』としか言わなかった。

本格的に梅雨になったのか、雨の勢いは強く、傘に落ちてくる粒も大きい。

この雨……俺みたいだな……。

なんて、考えていた時だった。



「誰かぁぁぁぁあああ!」



子どもの悲鳴のようなものが雨の中から聞こえてきた。


は?

悠とふたり、その場で足を止める。

キョロキョロと辺りを見渡した。

すると……。


――ガシッ


「お兄ちゃん! 助けて!!」


左の手首を、誰かに掴まれる。

目線を下に向けると、そこにはランドセルを背負った小5くらいの男の子がいた。


「は?」


わけがわからずに、傘もさしていない子供を見る。


「助けてっ! 弟が、あっちにある川に落ちたんだ。雨で川の水が増えてて、僕じゃどうにもできない! 弟を助けて!!」


おいおい、ヤベーじゃねーか。


その子供の案内で、川へと向かうことにした。


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