地味子の秘密*番外編*
また。

バスタオル類を一式渡され、シャワーを浴びる。


「うえっ……口の中まで泥が入ってる」


数回うがいをして、ようやく口の中もすっきりした。



シャワー室から出て、制服の下だけを履き、タオルを首にかける。

まだ濡れたままの髪を長椅子に座って拭いていたら、


――コンコン……


誰かがドアをノックする音が聞こえた。

誰だ?

養護教諭か?


「はい?」


返事をすると、意外な人物の声が聞こえてきた。


「陸? 入ってもいい?」


へ? あ、杏?

扉の向こうにいるのは、自分の彼女。


てか、あ?

室内にある掛け時計を見ると、やっぱり今は授業の最中。
コイツ、授業を抜け出してきたんだろうか。


「あぁ」


許可を出すと、ドアがゆっくりと開く。

その扉から、ひょっこりと杏が顔をのぞかせた。


「シャワー浴びたの?」

「あぁ」


彼女は、トコトコと俺の傍まで歩いてきて、少ししゃがむ。


「杏こそ、授業抜けて来たのか?」

「うん」


――ガシガシッ

タオルで髪を拭きながら問いかけた。

ホントに抜けて来たのかよ、お前、優等生だろーが。

とか、考えていた瞬間。

――ガシガシッ

え?

杏が俺の頭をタオルで拭き始める。

それも、無言で。


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