地味子の秘密*番外編*

「杏?」

「なに?」

「いや……なんでもねー」


なんか、いつもと違う彼女に違和感を覚えた。


「なぁ、なんでここにいるってわかった?」

「雑鬼に聞いたの」

「なるほど」


他愛のない会話をしながら、杏の様子を見る。

けど、タオルで視界が遮られ、表情が見えない。


「あんまり、無茶しないでよ」


――ガシガシ……


「あ?」


小さな声が聞こえた。

杏の手を握り、髪を拭くのをやめさせる。


「杏?」


タオルを取って、彼女の顔を下から覗き込んだ。

杏の大きな瞳は、ゆらゆらと揺れていた。

な、泣いてんのか?


「いつまで経っても学園には来ないし、おまけに相澤くんも来てないって言うし、事故にでも遭ったんじゃないかって怖かったんだから」


ポロポロと、瞳から雫が流れ落ちていく。


「え……」

「やっと来たと思ったら、人助けしてたとか……もう心配させないでよ」

「悪い……」


ボソボソと杏が話すので、耳を傾けていた。

すると、突然。

――ブニッ!


「いって!」


まだ目に涙をためている杏が、俺の左頬をつねる。

何すんだよ!?

少しイラッとした瞬間。


「バカ陸、なんで他の女の子に見せるの……ムカつく」


口のへの字に曲げた杏が目の前にいた。

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