地味子の秘密*番外編*
「ちょっと陸!」
「なに?」
「離れてよ、誰かに見られたらどうするの?」
「や~だ!」
恥かしいのか、バタバタと暴れる女を先パイは抱きしめる。
ちょっ……「や~だ」ってかわいい……。
女の腰と胸の下に腕を巻きつけて、ギューっと抱きしめる先パイ。
その表情は、大好きなものを独り占めしたというようなうれしそうなものだった。
ねぇ、先パイ? 先パイも本当にその女のことが好きなの?
「大体、なんで他人に傘を貸すかな?」
「だって……なんかかわいそうに思えて……」
「それで、今帰れないのは誰かな?」
「ご、ごめんなさい……」
女を抱きしめたまま話す先パイ。
話の内容を聞いていると、どうやらあの女が、他の人に自分の傘を貸したらしく……傘を持って来ていなかった先パイも、今帰れないという状況らしい。
すると。
「じゃあさ……」
――ゴソゴソ
女が自分のカバンをあさりだす。
そして、ポケットティッシュで、何かを作り始めた。
「杏? 何作ってんの?」
「ん~」
先パイが問いかけても、答えを濁す女。
女のこと、杏って呼んでるんだ。
本当に、仲……いいのかな?
そして、数分後―――。
「できた!」
そう言って、作ったものを先パイに見せる女。
「は……?」
見せられたものが、予想外だったのか……ポカンと口を開ける先パイ。
そんな姿でもかっこいい……!