地味子の秘密*番外編*
――パタパタパタッ!
「杏!」
即座に駆け寄り、手を掴んでその場に立たせ、家の中に入った。
『あ、陸!』
口パクだが、下を向いていた杏が顔を上げ、パッと満面の笑みになる。
ヤバ……その顔、マジかわいい。
いや、そうじゃねーだろ。こんなくそ寒い日に、なんで外にいんだよ。
握ったコイツの手は、驚くほど氷のように冷たかった。
相当、外にいたってことになる。
車から降りて数分もしない俺の体でさえ冷えたのに。
「なんでこんなとこにいんだよ! カゼ引くだろーが!!」
少し声を荒げて叱ると、杏の表情は急に暗くなった。
笑顔が消える。
そして、俺に掴まれていない方の手で、そばに置いていたらしいバックから、筆談用のホワイトボードを取り出した。
なにか、言いたいんだな。
スッと、掴んでいた手を俺が放すと、スラスラとペンを走らせる杏。
そして、気まずそうに、見せてきた。
書かれていたことは……。
『ごめんなさい。ちょっとでいいから、陸に会いたかったの』
というモノだった。