地味子の秘密*番外編*
そう思って、杏の顔を覗き込みながら言った。


「ありがとな。会いに来てくれて」



――フルフル


首を横に振った杏は、再びさっきのような満面の笑みを浮かべると、ギュッと俺に抱きついてくる。



「親父さんたちには、ここにいるってこと話して来たのか?」



尋ねると、コクンと大きく頷きが返ってきた。



だけど、もう日付が変わる時間だ。俺が独占していても、まだいいのだろうか?


ちょっとだけ、これからどうするか悩んだ。




せっかくのイヴ。


もう少しくらいはいいか?


俺だって、今日は仕事頑張ってきたんだし……ご褒美くらい、ほしい。



なんて考えていると。


――モゾモゾモゾ



俺の腕の中で、またボードに書き始めた杏。




「なんだ?」


『お父さんね、陸がいいって言うなら、泊まってきてもいいって』




書いたモノを見せられ、杏の体に回す手に力を込める。





「んじゃ、今夜は帰さない」




ニッと笑って、彼女にそう言った。



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