地味子の秘密*番外編*
ジッと、高瀬くんを見つめると。


「お前、俺の演技も見抜けねーんなら、女優としてまだまだってことじゃねーの?」


そう言って、フッと柔らかく笑った。


その言葉がすべてだった。




私は、高瀬くんの芝居に騙されていた。


電話も、全部ウソ。

事務所の社長に、『辞める』なんて言っていない。

仕事の荷物を捨てるなんて言ったのも、私に初心を思い出させるため。



そう思うと、ホッとして……また涙が出た。

止まらなくて、ボロボロと溢れ出る。

思わず握っていたタオルで拭いた。



すると。



「まったく、繭より世話がかかるな」



ーーガシガシ

笑いながら、頭を撫でられた。



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