地味子の秘密*番外編*


コンビニを出て会社への道を進む。

オフィス街でも一等地にある私の勤める会社。

名前を聞けば誰でも『そこ知ってる!』と答えるだろう。

有名なグループ企業だしね。

でも、企業としても有名なんだけど……もっと有名なのが……社長。


メディアにも顔を出して、一般のお茶の間にも知られていると思う。

田舎にいる私の両親も、直接会ったことはないのに、顔は知ってるもんなぁ。


そんなことを考えながら歩いていると、少し先に、周囲をキョロキョロと見渡している女性がいた。



「んー……こっちであってるはず」


彼女に近づくと、そんな独り言が聞こえてくる。

手には小さな白い紙切れ。

どうやら地図みたい。


「どうしよ、これじゃいつ届けられるか……」


声音から困った様子が窺えた。


「あの」


声をかけると、彼女は一瞬ビクッと肩を揺らす。

あ、驚かせちゃった?


と思ったのもつかの間、女性はゆっくりと私の方へ振り返った。

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