地味子の秘密*番外編*
そして、社長は片手で頭を抱え……大きくため息をついた。
「なんでお前は、いつもそう……」
「え。何か問題あるの?」
キョトンとした顔の彼女に、とうとう社長の雷が落ちる。
「問題ありまくりだろうが! このバカ杏!!」
「へ?」
「電車が人多い? 当たり前だろ、それくらい。何で、お前はそう考えなしなわけ? 駅の人ごみに巻き込まれてこけたりしたらどうするんだよ! おまけにひとりで行動すんなって、いつも言ってんのに、なんで動くんだよ。神がかった方向音痴が。お前は何歳だ? そんなことも理解できねーほどのバカだったとはな」
一気に吐かれた言葉に、シーンとなるエントランス。
それくらい、社長の迫力はすごかった。
超絶イケメンが怒ると……ヤバいくらいに怖いことを知った。
でもさ、社長の言ってることって……かなり過保護って感じじゃない?
電車に乗っちゃダメ、ひとりで出歩いちゃダメ。
いや、こんな絶世の美人なら……外に出ただけで危なそうだ。
痴漢、ナンパ、誘拐とか十分あり得るわ。
だけども彼女は反抗するようで。
「そんなに怒らなくても大丈夫、ちゃんと気を付けて歩いてきたから。一度もこけなかったもの。そんなにドジやらないわよ。会社まではひとりで辿りつけなかったけど、親切な方が案内してくれたし大丈夫大丈夫」
初めて声を聞いた時と同じ声音で返していた。