地味子の秘密*番外編*
ん? ニンプ? にんぷ? 妊婦!?
え、てか! その言葉の意味って!!
「え!?」
思わず、声をあげてしまった。
それは自分で思っていたよりも大きかったらしく、社長の視線が私に向けられる。
イケメンの社長と目が合ってしまい、ビクッと肩が上がった。
すると、黒髪の彼女も私の方を見て、ハッとしたように社長に話し出す。
「この方がね、道に迷っていたら、会社まで案内して下さったの」
「あ、いえ私は……そんなに大したことなんて」
フルフルと両手を胸の前で振ってみせた。
私は行き先が同じだった彼女を連れて来ただけ。
特に何もしていない。
だが、社長はフッとさっきまでの怒りの表情を消して、微笑みを向けてくれた。
そして、黒髪の彼女の腰に手をまわして向き合う。
「えっと、総務課の田中さんだよね。今回は、私の妻がご迷惑をおかけしました」
そう言って、軽く頭を下げて一礼した。
それにならって私もペコッと頭を下げる。
あ、やっぱりそうなんだ。
黒髪の彼女、絶世の美女は……滝本社長の奥様。
社長がご結婚されていることは知っていたけど、一般社員は奥様の顔は知らなかった。