地味子の秘密*番外編*
◆Trick or Treat?
大学1年の秋が舞台です。
―陸side―
日中の気温もだいぶ下がり、そろそろ本格的な秋がやって来そうな、とある平日の午後。
「では、今日はここまで」
チャイムと同時に講義が終了し、教室を出て行く講師。
俺は机の上に広げたテキスト類をまとめ、出していた筆記用具をペンケースの中へと戻した。
今日は金曜日。
特に急ぎの仕事はない……杏と街でブラブラしてから帰るか。
杏だって、『用事はないよ』って言ってたし。
トートの中にテキストをしまい、俺の左側にある通路を挟んだ席にいる彼女を見た。
しかし。
「は? 杏?」
さっきまで。
講義が終了する直前まで、そこにいたのに。
杏は……俺の隣にはいなかった。
たしか今日は……朝比奈と一緒に座っていたと思う。
ふたりでキャッキャと笑いながら、受講していた。
その朝比奈さえもいない。
広い教室内を見渡すが、ふたりの姿はどこにもなかった。
服のポケットから携帯を取り出し、杏の電話番号を探す。
発信ボタンを押して耳にあてるが―――。
『お客様のおかけになった電話番号は現在電話の届かない場所に―――……』
女のアナウンスが流れるのみだった。
どこに行った?
携帯を耳から離し、教室内を再度見渡しながら考える。
その時に、教室内には……女がいないことに気が付いた。
―陸side―
日中の気温もだいぶ下がり、そろそろ本格的な秋がやって来そうな、とある平日の午後。
「では、今日はここまで」
チャイムと同時に講義が終了し、教室を出て行く講師。
俺は机の上に広げたテキスト類をまとめ、出していた筆記用具をペンケースの中へと戻した。
今日は金曜日。
特に急ぎの仕事はない……杏と街でブラブラしてから帰るか。
杏だって、『用事はないよ』って言ってたし。
トートの中にテキストをしまい、俺の左側にある通路を挟んだ席にいる彼女を見た。
しかし。
「は? 杏?」
さっきまで。
講義が終了する直前まで、そこにいたのに。
杏は……俺の隣にはいなかった。
たしか今日は……朝比奈と一緒に座っていたと思う。
ふたりでキャッキャと笑いながら、受講していた。
その朝比奈さえもいない。
広い教室内を見渡すが、ふたりの姿はどこにもなかった。
服のポケットから携帯を取り出し、杏の電話番号を探す。
発信ボタンを押して耳にあてるが―――。
『お客様のおかけになった電話番号は現在電話の届かない場所に―――……』
女のアナウンスが流れるのみだった。
どこに行った?
携帯を耳から離し、教室内を再度見渡しながら考える。
その時に、教室内には……女がいないことに気が付いた。