地味子の秘密*番外編*
◆恐怖の肝試し
~陸side~
夏特有の蒸し暑い夜。
「陸くーん! 胡桃、怖いよ~」
俺の腕に引っ付いてくる女が涙目で言った。
「あの、ちょっと離れてくれる?」
ガッチリとホールドされた自分の腕から女の手を引きはがしながら話す。
「ちょっ……待って!」
スタスタと歩いていく俺の後ろから追いかけてきた。
「おーい。全員集まれ~」
今日の幹事が招集をかける。
その声に、ぞろぞろと集まり始めるメンバーたち。
男女合わせて、20人ほど。
全員、同じ学部のヤツらだ。
俺らがいるのは、廃墟となった病院の正面玄関。
市街地から遠く離れ、人気もない場所にある。
以前は栄えていたようだが、過疎化に伴い……廃院となったらしい。
今から、この廃墟で肝試しをやる。
「しっかし、ココなぁ……」
5階建ての病院を見上げながら思った。
ここ、絶対に出る、だろ。
自分のカノジョには劣るが……俺には霊感があるもんで。
いるか、いないかくらいは……わかる。
この病院は、絶対にいる。
そんなことを考えていると。
「あーぁ。神崎さんもいればなぁ~」
俺の隣にいた男たちがぼやいた。