地味子の秘密*番外編*


「病院ってことで霊が出やすいんだけど。でも、ここで一番有名なのは、血吸いの斉木さん!」

「は?」


血吸いの斉木さん?

なんだそれ。聞いたことねーよ。

俺が怪訝な表情になったからか、ヤツは病院を見上げながら話し始める。


「あのね。昔、この病院にひとりの女の子が救急車で運び込まれたの。女の子は交通事故で、大量に出血していて、虫の息状態。すぐに輸血が必要だった」

「それで?」


続きを促した。


「でも、女の子は珍しい血液型で、輸血のストックがなくて。近場の病院にも、輸血のストックはなかったんだって。それで、女の子は死んじゃったらしいの」

「ふーん」

「それでね、輸血ができていれば助かったらしくて……女の子が病院を恨んで化けて出るようになったらしいよ。それが、入院患者さんの血を吸血鬼みたいに吸って、奪うんだって。あまりにも被害が大きかったから、病院側も怖くなって廃院にしたらしいよ! でも、今でも出るんだって。肝試しに来た人間の中から好みを見つけては、血を吸い尽くすって噂だよ」

「それが、血吸いの斉木さんってことか……」

「うん、怖いよねー」


そう言った女は、自分の両腕をさすった。


たしかに、寒気のする話だ。

自分の死を受け入れられず、他人の血を吸う霊か。

いや、杏に言わせたら妖怪に近いのかもしれねーな。

そんなヤツがいるという廃墟での、肝試し。

なにも起こらなきゃいいけど。


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