地味子の秘密*番外編*


だが、俺の心配とは裏腹に、肝試しは何事もなく進んだ。


「なんてことなかったな!」

「ホント~! 暗いけど静かな病院って感じ。幽霊も全然出ないし、拍子抜けだったね」

「出ると思ったんだけどな、病院だし」


先に済ませたペアが話す。

そうなのか?

俺が見た感じじゃ、絶対に何かしら棲んでると思ったんだが。

思い過ごしだったのか?

そう考えている間にも、肝試しは行われ、ついに俺たちの順番が来た。


「滝本って幽霊とか平気?」

「そうだね、特に怖いとか思わないかな」


ぶっちゃけ、俺視える人間だからな。

ここにいる誰よりも、おっかない妖怪たちを見てきてる。

幽霊とかそこら中にいることも知ってる。


「じゃあ、ここは楽勝かもな!」

「ははっ。行ってくるね」


同じ学部のヤツらの言葉を背に、俺は女とふたりで、病院内へと入る。


「なんか、病院内の方が涼しいね」

「そうだね」


一歩入った病院内は、ひんやりとしており、熱い外より快適に感じた。

懐中電灯の明かりを頼りに、院内を進む。

正面玄関に入ると、広めのロビーがあった。

ソファーなども置かれているが、皮が破けており、中の綿が飛び出している。

埃っぽく、湿った感じだった。


「陸くん、こっちだよ」

「あぁ」


彼女に腕を引っ張られて、1階を一周し、階段を昇る。

階段にも埃が溜まっており、誰も足を踏み入れた様子がなかった。

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