地味子の秘密*番外編*


廃墟らしく、床や棚にも書類が散乱している。


「なんだこれ?」


しゃがみ込んで、書類のひとつを拾い、懐中電灯で照らすと。

それはカルテだった。

おいおい、こんな個人情報を置いていていいのか?

いくら廃墟だからって……。

そう思って、名前の書かれた部分を照らすと。


「斉木……?」


汚れて、擦れており、読みにくくはなっていたが、カルテには斉木と名前が記されていた。

まさか、あの斉木?

先程聞いた彼女の話を思い出す。

事故で運び込まれ、亡くなった……女の子。


カルテの名前をもう一度見ると、苗字だけで、下の名前は読めない。


カルテが作成された日付を見ると、7月15日。

ん?

7月15日って……今日、だよな?

ということは、何年前かはわからねーけど、今日、ここに運び込まれたってことか。


カルテは、ふたつ折りになっていて開くと、なにやら書かれていた。

字の汚い医師が書いたようで、読めねーけど……ページの最後には。

『出血多量により、午後10時14分。患者死亡』と明記してある。

本当に、この廃院に出るらしい血吸いの斉木さんのカルテだった。


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