地味子の秘密*番外編*

着信の相手は、病院の外で待つメンバーの男のひとり。

通話ボタンを押して、耳にあてると。



≪もしもし、滝本?≫

「あぁ。どうした?」

≪どうしたって……お前、今どこにいるんだ?≫

「え、まだ病院の中だけど」

≪何階?≫

「3階。今から4階に向かうけど……」


そこまで話したところで、電話口の相手は不思議そうに言った。


≪遅くねえか? 俺ら、全員15分もあれば行って戻って来たぞ。なのに、滝本たちは、もう20分以上過ぎてるんだけど≫

「え?」

≪寄り道してんのか?≫

「いや、そんなには……」


そう言われて、自分の腕時計を懐中電灯で照らす。

たしかに、俺らが肝試しをスタートしてから20分経っていた。


時刻は午後9時55分。


俺ら、のんびりと行き過ぎたか?


『早めに戻る』と、電話の相手へ返そうとした時だった。



< 296 / 381 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop