地味子の秘密*番外編*
着信の相手は、病院の外で待つメンバーの男のひとり。
通話ボタンを押して、耳にあてると。
≪もしもし、滝本?≫
「あぁ。どうした?」
≪どうしたって……お前、今どこにいるんだ?≫
「え、まだ病院の中だけど」
≪何階?≫
「3階。今から4階に向かうけど……」
そこまで話したところで、電話口の相手は不思議そうに言った。
≪遅くねえか? 俺ら、全員15分もあれば行って戻って来たぞ。なのに、滝本たちは、もう20分以上過ぎてるんだけど≫
「え?」
≪寄り道してんのか?≫
「いや、そんなには……」
そう言われて、自分の腕時計を懐中電灯で照らす。
たしかに、俺らが肝試しをスタートしてから20分経っていた。
時刻は午後9時55分。
俺ら、のんびりと行き過ぎたか?
『早めに戻る』と、電話の相手へ返そうとした時だった。