地味子の秘密*番外編*
後ろを振りかえってみても、足跡はふたり分のみ。

埃の溜まっているこの場所は、人が歩けば……靴の跡が残る。

そうじゃなくても、10人以上が通れば、埃も避けられているはずだ。

なのに、俺たちがいる階段には、その形跡がひとつもない。




この病院、変だ。



そう思って、隣にいる女を見た。


「ねぇ、どうして階段に他のメンバーが歩いた形跡がないんだろう?」

「ホントだ。おかしいよね」

「さっさと5階まで行こうか? ノート類を回収して戻ろう」

「うん」



彼女も賛成したので、俺たちは4階には寄らずに5階へと向かう。

階段を昇り切ったところで、『講堂』への案内板が出ていた。



「あっちかな?」



彼女と一緒に行くと、目の前に観音開きの扉が現れた。

扉の上には、プレートが掲げてあり、『講堂』と書かれてある。



「ここだね」

「うん」


ギーッと、金具が錆びたような音を立てながら、扉を開けた。

室内には当然灯りはなく、真っ暗だ。

懐中電灯で照らし、ノートが置かれてある場所を確認すると。



「滝本くん、あれじゃない?」


チラッとでも見えたのだろうか。

隣にいる彼女が、一点を指差した。


その指先を照らすと。


「あ、ホントだ」


彼女の言った通り、幹事が持ってきたのであろうノートが置かれている。

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