地味子の秘密*番外編*


   *


廃墟の病院での騒動から、1時間半が経過。


あの斉木を調伏した後、俺は杏から話を聞く間もなく……外で待っていたメンバーの元へと帰された。

『あとで、説明するから』

そう言いきられて、俺は従い……肝試しに使用したノート類を持って病院から出た。

まわってくる時間が長かったことと、ひとりで戻って来たこと。

それらにより、メンバーたちから色々と聞かれた。

全員が、同じ学部のヤツだと思っていた斉木 胡桃は、実は病院で死んだ幽霊で、一緒に肝試しに参加していたこと。

そいつが、血吸いの斉木さんで、襲われたことも話した。

参加した全員が、青ざめた表情になり、至急撤退したんだ。


それはそうと。

確かに襲われたと思っていたが、俺の首筋には……噛み跡なんてひとつもなかった。

あれだけ、生々しい音が聞こえていたというのに。

ケガひとつしておらず、不思議なまま帰宅したんだ。


帰宅して数分後に、杏が来た。

自室へと上げて、やっと話をする態勢になったんだ。


「で、どういうことだったんだよ?」


ベッドに腰掛けた俺が問いかけると、ソファーに座っている杏が話した。


「いやー、さっき言ったじゃん? あの廃院で斉木っていう霊が出るって有名だったんだよ。それで、じいちゃんから仕事命令が出て、向かったんだけど……まさか、陸たちが肝試しにくるなんて、ねぇ?」


「驚いたよー」なんて言って、悠長に紅茶を口に運んでいる。

< 312 / 381 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop