地味子の秘密*番外編*

ううん、でも。

あそこで高瀬くんが来てくれたことにホッとしたのも事実。

色々と言われたし……暴力振るわれそうになった。

だから、助けてくれたことには感謝しなきゃ……。


「高瀬くん……あの、ありがとうござい」


お礼を言おうとしたのに、それは遮られて。


「なにがいい?」


突然、質問をぶつけられた。


「へ?」


ポカンとして、目の前にあるものを確認すると。

私たちはアイスクリーム屋さんの屋台の前に立っていた。

い、いつの間に来たの? それにこんな場所あったっけ?

不思議に思いつつも。


「いらっしゃい、なに味にする?」


人のよさそうなおばちゃんの笑顔に思わず笑みを返してしまう。


「俺、バニラ。茅那は?」

「え……あ、チョコがいいです」

「じゃあチョコとバニラひとつずつお願いします」


そう注文して数分後、私たちは近くにあったベンチに並んで座っていた。


「ありがとうございます、アイス買ってくれて……」


隣にいる高瀬くんにお礼を言うと、『ん……』というように短い返事。

意外にも甘いもの好きだよね、高瀬くんって。

そんなにたくさん食べるわけじゃないけど……。

海の眺めながらアイスを食べ終えると。


「茅那」

「はい?」

「悪かったな……あんなイヤな思いさせて」


ポツリポツリと高瀬くんが謝りはじめた。


「あ、いえ……大丈夫です。高瀬くんが来てくれたし、何もされなかったから……」

「なにもないってウソつくな。色々と言われただろ」

「でも、あれくらい……昔から言われてきたんで……慣れっこです。人前に出て目立つことをやると、どうしても棘のある言葉を言われるんです」

「それにしたって、今日のは俺のミスだ。言われなくていいことまで言われたんだろ?」


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