地味子の秘密*番外編*
取り出して相手を確認すると、画面には『工藤茅那』の文字。
こんな時間にどうしたんだ、コイツ。
勤務中に電話なんて絶対にかけてこない。
たとえ昼飯時でも俺の仕事にはいつ休憩があるかわからないため、大抵アイツが連絡を取りたい時はメールだ。
俺だって、アイツの仕事の邪魔にならないようにメールの方が多くなった。
今日は午後からオフのはず……どうした?
滅多にない電話が気になって、小笠原さんへ話しかけた。
「すいません、ちょっと一本電話済ませてくるんで、先に行っててください」
「お? 電話? わかった。早く来いよ~」
小笠原さんは、そう言うとスタスタとエレベーターがある方向へ歩いていく。
俺はスマホの通話ボタンを押して耳にあてつつ、人気の少ない自販機コーナーへ向かった。
「もしもし、茅那か?」
自販機コーナーにある長椅子に腰掛けて話す。
『あ、高瀬くん? お仕事中にごめんなさい。今大丈夫ですか?』
スマホから聞こえてきたのは、いつも聞いているアイツの声。
声からして切羽詰まった状況じゃないらしい。
それだけでホッとした。
しかし、なんとなくいつもよりテンションが高い気がする。
「あぁ、平気。どうした?」
『うん、あのね。さっきマネージャーさんから聞いたんですけど。今度、ドラマが決まったんです。それも主演で!!』
「へぇー……よかったな」
あー……なるほど、そういうことか。
アイツのテンションが高い理由がわかった。
ドラマの仕事が入ったワケね、だから俺にも知らせたくて電話してきたと。
『それでね、そのドラマっていうのが警察ものなんです!』
「ふーん」
『あ~なにその興味なさそうな返事ッ! 高瀬くん、ちゃんと聞いてますか?』
「あぁ…聞いてる聞いてる」
相槌を返していると、ふとまだ敬語が抜けてねえなぁ~と思った。