地味子の秘密*番外編*
「なんでも、今度刑事ドラマの主演をやるらしい。それで番組の宣伝と、そろそろ始まる秋の交通安全のキャンペーンも兼ねて彼女がウチの署に今日やって来るらしいよ」
なんとも丁寧な説明をしてくれた小笠原さんだが、その衝撃的な話のおかげで俺の頭は一気に覚醒した。
は? 今日?
いや今日とか、そういう問題ではない。
来るのか? ウチの署に。
アイツ……茅那が?
「だから、机まわりや部屋は整理整頓しとけよ。テレビも入るからな」
課長が全員に向けて呼びかける。
それと同時に朝礼は終わった。
ぞろぞろと自分の席に着く同僚たち。
全員ではないが、ほとんどのものが卓上の書類や物品、パソコンなどを整理しはじめる。
その中で、沖田の表情はキラキラとやたら輝いて見えた。
なんとなく。その理由はわかるが。
そんな沖田を眺めつつ、俺はとりあえず席に着く。
「工藤茅那を生で見れるって、マジラッキーだよね」
「そうですか? 別に何とも……」
同じく席に着いた小笠原さんからの問いかけに返すと、会話を聞いていたらしい沖田が驚いたような表情でこちらを向く気配がした。
「え~? あの茅那ちゃんだよ!?」
「は?」
案の定、俺のところまでやってきて両肩をがっしりと掴まれ、グイッと顔を近づけられる。