地味子の秘密*番外編*
おい、やめろ。俺はそういう趣味はない。
男に顔を近づけられて喜ぶやつがどこにいるんだ。
そう思うも、興奮気味の沖田には俺の不快な表情をくみ取ってもらえず。
なにやら熱弁しはじめる。
チラッと小笠原さんを見ると、捕まった俺をニヤニヤとした顔つきで見ており『頑張れ蓮ちゃん』と口パクで言った。
そして、我関せず、といった表情で卓上の片づけを始める。
「工藤茅那っていえば、歌唱力、ルックス、性格すべてがパーフェクトなアイドルだぞ!」
「へぇ……そう」
「大人しくて恥ずかしがり屋なのに、唄うと人が変わって笑うとめっちゃ可愛いし!」
「あっそ」
「嫁さんにしたい女性芸能人、1位なんだぞ!!」
「ふーん」
興味なさげに返すと、さらに沖田はヒートアップしていく。
「男なら、ぜってぇーに茅那ちゃんにハマるんだよ!」
間違いない、という口調でヤツは宣言した。
その顔は鼻息が荒く、興奮した牛のようで。
あー……ここにも茅那信者がいると思った。
つーか。
いくらファンだからって……何でも知っているというような話しぶりは……気に食わない。
本当のアイツなんて知らねえだろ。