地味子の秘密*番外編*
「あ、斉藤さんありがとうございます」
一応礼を伝えると、彼女はニッコリと笑った。
その笑顔で、周囲の男たちを釘づけにしている。
「いえいえ! 私は女の子たちの気持ちを代弁してあげただけよ」
「代弁?」
意味がわからず、思わず聞き返すと。
「なに言ってんの! 高瀬くん、この警察署の女性たちメロメロにしてるじゃない。君に近づこうとあれこれ作戦を考えてる女の子は多いのよ? なのに、ホモ説が出るくらい女性の噂がないじゃない。女の子たちは高瀬くんが男たちと絡んでるのを見て羨ましく思っちゃってるんだから!」
『わかってんの?』と言いたげな表情で一気にまくし立てられ、ポカンと斉藤さんを見上げた。
以前、小笠原さんから『男の恋人がいるのか』と聞かれたことはあった。
だが、あの人はいつも冗談が大半だから気にしてなかったが。
俺は本当にそういう説があるらしい。
けど好き好んで女たちと関わる気はないので、別にどうでもいい気がする。
「そっちの趣味はありません」
一言返すと、斉藤さんの表情がパッと華やいだ。
「ってことは、女の子が好きってことよね?」
「別に好きってわけでは」
「じゃあなんで話したり関わったりしないの?」
「女が嫌いだからです」
「え~そんなこと言ったら結婚どころか、彼女もできないわよ?」
「構いません」
「ね、交通課の可愛い子紹介しようか?」
「結構です」
「そんなこと言って、会ってみるだけでも」
「嫌です」
俺と斉藤さんの会話を聞いていた沖田がひそかに右手を挙げて『俺! 俺、知り合いになりたいです。紹介してください!』と必死に訴えているが、斉藤さんは『アンタは自分で見つけなさい!』とバッサリとフッた。
そんな会話をしている中で、小笠原さんさんだけはニヤニヤと笑っていた。