地味子の秘密*番外編*
振り返ると、小笠原さん、沖田も一緒にいた。


「蓮ちゃ~ん、ご飯行くよ~」


ゆるい小笠原さんの誘いに「はい」と返事をして、財布とケータイだけを持つ。

4人で部署から出てエレベーターへと向かう。


「高瀬くんは何食べたい?」

「はいはいはい! 俺は揚げ物が良いです!!」

「沖田くんには聞いてないわよ」

「え~俺の意見も聞いて下さいよ! 高瀬ばっかり~」

「うるさい沖田! ほら、高瀬くんは何食べたい?」


沖田とのやり取りをしていた斉藤さんが、俺の腕へと触れてくる。

ポンッと軽く叩くような感じ。

視線を向けると、彼女が俺を見上げていた。

その目には、今まで絡んで来た女たちのような感情は籠っていなさそう。

男として見られていないと思うと警戒しないでいい。


「揚げ物でいいじゃないんですか」


そう一言返すと、「高瀬、俺の話聞いててくれたんだな! マジ良いヤツ!」と沖田が嬉しそうに話していた。


「じゃあ、あそこかな~うまいとこ知ってるんだよね」


揚げ物が食べられる店を思い出したのか、小笠原さんが言う。

全員でそこへ行こうと意見が合い、4人でエレベーター前まで来た。


そこで、ふとよく知る姿を見た。

エレベーター横の物陰に上手く隠れているつもりだろうが、制服がチラチラと見えている。


どうするか。

一瞬考え、他の3人に向けて話しかける。


「すいません、ちょっと用事思い出しました。すぐ終わるんで、先に行ってて下さい」


そう言うと、何も不思議に思わなかったようで3人は了承してくれた。

そこでふと思い当って、小笠原さんを呼び止める。



「すみません、ちょっと手伝ってください」


俺が頼みごとをすること自体が珍しいからか、小笠原さんは何かあると感じたようで頷いてくれた。



ちょうど来たエレベーターに乗って、斉藤さんと沖田は下へと降りて行く。

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