地味子の秘密*番外編*
ペコッと頭を下げて微笑む茅那に、慌てて小笠原さんも会釈する。
「蓮ちゃん」
「はい」
「付き合っている彼女って……この方なの?」
「はい」
「あの工藤茅那さん、なの? テレビに出てる?」
「まぁ……そうですね、あの茅那です」
そこまで話すと、小笠原さんは合点がいったような顔になる。
「なるほど、お前が彼女の存在を明かさない理由がわかったよ」
「世間にバレたら色々と問題があるんで」
「ほんっとに大事にしてんのね~蓮ちゃん」
先程までの表情とは打って変わり、彼はいつもの飄々とした笑みを浮かべている。
「可愛い可愛い後輩なんで、しっかり面倒見させてもらうよ。ね、蓮ちゃん?」
茅那に向けて微笑むと、パチっと俺にウィンクをして見せた。
いや男からもらっても嬉しくない。
「面倒見るという名の、弄りでしょ」
「そうとも言う~」
ケラケラと笑う小笠原さんは「また改めて会おうね」と茅那に言い、昼食の店の場所を俺に教えるとエレベーターに乗り込んだ。
「あんまりイチャイチャしちゃ嫌よ? お兄ちゃん妬いちゃうからね?」
なんて言葉を残して、彼は扉の中へと消えていった。
静かになったフロア内。
昼食時ってこともあり、人気はない様子。
茅那とふたりでエレベーター前に立ち、視線は扉に向けたまま話し始める。
「小笠原さんってすごい人だね」
「は? なんでだよ」
「だって、高瀬くんを蓮ちゃんだなんて呼ぶ人いないよ? 貴重な人だよ?」
「まぁ、確かに」
「でしょう~?」
「じゃあなんでお前は高瀬なわけ?」
ふと会話を切って茅那の顔を見た。