地味子の秘密*番外編*
「ねぇねぇ」
「あ?」
「制服、似合う?」
小声で問いかけてくる茅那。
「一度着てみたかったの、婦警さんの制服! 夢が叶った」
「夢だったのか?」
「そう! でもまだあるよ」
「なに?」
「高瀬くんの制服姿見たい!」
「俺は式典とかお偉いさんに会う時しか着ねーよ」
「なんで?」
「なんででも。そういうもんだから」
「いいなぁ~高瀬くんの制服見れる人。ね、じゃあ今度着た時に写メ送って」
「送るかバカ」
「いいでしょ? あ! あたし今日は署長さんだもん。署長命令! 高瀬くん、写メを送りなさい」
署長になりきっているのか、いつもとは違う低音で命令を出す茅那。
だが、そんなことやるわけない。
「却下」
「却下なしです。あたし署長だよ? 高瀬くんより偉いもん!」
「いつまで言ってんだ」
呆れてため息をつくが、茅那はあきらめないようで。
「スーツも制服も似たもんだろ。制服見たからって面白いことねーぞ」
「それでもいいの! いいから写メちょ―だい?」
「いつになるかわかんねえぞ」
「待つ待つ!」
「……しょうがねえな」
仕方あるまい。
このままだとずっとねだられる気がするからな。
俺の諦めた一言にパッとわかりやすいほど顔を輝かせる茅那。
「やった! 高瀬くん、すき!」
ふわっと細い腕が自分の首にまわったと思った瞬間、視界は遮られる。