地味子の秘密*番外編*
ポーンとエレベーターの到着音が鳴り、静かに扉が開く。
「じゃあ戻るね」
「あぁ」
軽く触れるだけのキスをして手を離すと、鉄の扉の向こうへと茅那が入っていく。
小さく手を振る彼女に笑みを返すと、エレベーターは閉まった。
腕時計で時間を見ると、休憩時間は半分ほどしか残ってない。
「あ、ヤベ。早く行かねーと」
下へ降りるためにエレベーターのボタンを押す。
しばらくしてやってきたエレベーターに乗り、1階を押すと静かに閉まる扉。
そうして、俺は指定された昼食の店へと急いだ。
来たことが遅かったことを小笠原さんに弄られたのは言うまでもない。
しかし、不思議なことに。
先に行ってると思っていた斉藤さんが、ほぼ俺と時を同じくして店に現れたこと。
最近会ってなかった同期とばったり会って話し込んでしまったとのことだったが、なんとなく飯を食う間、斉藤さんからの視線が気になった。
俺の気のせい。だよな。