地味子の秘密*番外編*
『あの公園で待ってる』
返信が来た時には、『私、用事で来ちゃったから帰るね!』とメンバーの実那に伝えていた。
“あの公園”っていうのは、私たちが付き合いはじめた場所。
そして、初めて会った場所だ。
走っていると顔にあたる風が涼しくて気持ちいい。
そろそろ秋本番だから、徐々に寒くなってくるのかな?
待ち合わせ場所までの道のりでぼんやりと考えた。
目的の場所が見えてきて、走るスピードが上がる。
公園内のベンチのそばで、外灯に照らされた長身のシルエットを見つけた瞬間。
何も言わずに後ろから抱きついた。
「……っと、来たか。背中から突進してくんなよ」
低いハスキーボイスが心地よく耳に届く。
シトラスミントの香りが鼻をかすめた。
何か言われたけど、気にしない。
広い背中に顔をくっつけて、思いっきり息を吸う。
「高瀬くん……」
ゆっくり息を吐いた後、彼に呼びかけた。
「ん?」
優しい返事とともに、高瀬くんは私の腕をほどいて……振り返る。
「どうした茅……」
そんな問いかけをかき消すように。
精一杯背伸びをして、彼の服をギュッと握りしめて……キスをした。