地味子の秘密*番外編*

言葉にならないくらい嬉しかったの。
ライブに来てくれて。
初めて、仕事として唄ってる姿を見てくれた。
いつもの自分の部屋や高瀬くんの部屋で口ずさむようなものじゃなくて。
ストレス発散に行くカラオケでもなくて。


はじめてだったの。


会場で高瀬くんを見つけた時、一瞬時間が止まったと思った。
大勢のファンが見ているというのに、私はライブ中ということも忘れて……彼に釘つけになってしまった。


来ていることにびっくりして。
だって、昨日の電話やメールでも一言も言わなかった。
そういうことをわざわざ言うような人じゃないけど。


まさか来ているなんて思わなくて。
それも、アリーナ席の最前列に近い席とか、奇跡的としか言えないじゃない?


今日のうお座の運勢は1位だったんだろうね。
いっぱいお仕事頑張ったから、神様がご褒美くれたのかな。


そう思いながら、彼から離れる。


「ありがとうございます、来てくれて」


一言伝えて微笑んで見せた。


本当にありがとう、高瀬くん。
やっぱり大好き。


ギューっと、正面から彼の背中に手をまわして抱き着いた。


「まったく……いちいち可愛すぎ」


クスクスと笑って、高瀬くんは私を抱きしめてくれる。

< 376 / 381 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop