地味子の秘密*番外編*
大きな手が頭や髪を撫でてくれて……ホッとした。

思い返せば、私たちが会うのは今日が3週間ぶり。
連絡は取っていても、私が今日のライブの準備やそのほかのお仕事で忙しくて逢ってなかった。


「会ったの久々だな」
「そうですね」
「お前痩せたんじゃねーのか?」
「ライブ前はいつもこうですよ」
「じゃあ、この格好もいつもか?」


「へ?」


突然の問いに驚いて、彼の胸から顔を上げる。
見上げた高瀬くんは……ちょっと不機嫌そうだ。


格好?
自分の着ているものを見下ろすが、別にどうってことない。
大きめの、ダボッとしたスエット生地のミニワンピに、オーガンジー素材の靴下とハイカットのスニーカー。
防寒のためにチェックのストールを首に巻いてる。
ライブの前とか後は、こんな感じの着替えがしやすい服が多い。
着ていてラクなものが一番なのだ。


「いつもですけど、何か?」


何でもない、というように返すと。


「なんか……ヤダ」
「は?」
「そういうの着てるのを他のヤツらに見せたくない」
「……えっ、」


それって。


「妬い……」


妬いてるの?って聞きたかったけど。
先程の私と同じように、彼は私の顎を持ち上げて唇を塞いだ。


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