地味子の秘密*番外編*
カチャカチャという音が室内に響く。


「腕!」

「はい」


ギロリと睨まれて、おそるおそる樹里の前に腕を出した。

なにそんなに怒ってんだよ。

このくらいのケガなんて、いつものことだろ。


「いって!」

「ほらっ! 痛いんじゃない」


消毒液をかけられて腕に激痛が走る。

ビリビリとしびれるような痛み。


「だからちゃんと手当してって言ったのに」

「……すまん」


テキパキと腕に包帯を巻いていく樹里。

その手際の良さを見てると、昔のことを思い出した。


やり方もわからずに、はちゃめちゃな手当。

包帯を締めすぎて、俺の腕がうっ血する事もあった。

それに比べたら、今はもう樹里は、ほとんどのケガに対応できる。

養護教諭並だな。


彼女は昔、約束したことをずっと守ってくれてる。


『渉くんがケガしたら、私が手当てしてあげる』


10年以上経った今も、約束を破ることはない。


「はい、終わり」

「ありがとな、樹里」


終わったのでイスから立ち上がる樹里にお礼を言った。

軽く微笑んでくれる。


使った救急箱を元の場所に直してる彼女を眺めた。





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