地味子の秘密*番外編*
投げつけられた鞄が当たった額が痛い。

中に入っていた教科書で思いっきり打ったし。

投げることないだろ、投げることは。


「樹里のヤツ……何が気に障ったんだって言うんだよ」


朝の騒がしい廊下を歩きながら呟く。


あっ……ま、まさかっ!

もうコクって、フられたのか?

まさかの玉砕?

いや、樹里をフる男がいるのかが疑問だ。

しかし……うむ。そうかそうか……フられて傷心の身だったのかもしれねーな。

それなら、悪いこと言ったな。

あとで謝ろう。


そう考えて、教室に入る。

男友達との挨拶をして、机に伏せた。


高2になって、家業を本格的に始めた俺。

今朝のケガも、昨夜に退治したヤツから負わされたモノ。

ターゲットは鎌鼬(かまいたち)で、風と鎌を自由自在に操るヤツだった。

結局、逃げられてとどめはさせなかったが……。

深手は負わせたし、しばらくは大人しくしてるだろうから。

今度暴れてたら、調伏することにしよう。



そのため寝不足で、そのまま俺は眠ってしまった。






「渉」


そう呼ばれて、目を開けたのは3限目の数学の時間。

ポリポリと頭を掻きながら、起きあがる。


ふと黒板を見ると、樹里が問題を解いていた。


「渉! また鈴宮のヤツ、篠田さんに当ててるぜ?」


隣の席の柏木がそう言って来る。





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