地味子の秘密*番外編*
樹里が抱き着いて来るなんて初めてのこと。

ビックリした。

さっきのドキッというのは……慣れないことをされたからか?

いや……そうだよな。


モヤモヤとはまた別の気持ちを、そう思い込むことによって消す。


『渉……どこにも行かないで……』


樹里の言葉の意味が、わからなかった。

だが……彼女の小さく震えている肩を見て、黙って抱きしめる。


……コイツ細すぎ。


あまりの華奢な体に、またドキッとした。

さっきは一回で終わったのに、今度はなぜだかうるさい拍動が止まらない。


どうしたんだよ……俺。


細くても、柔らかい樹里。

すぐに壊れそうで……男や妖怪とは、まるで違う。


いや……男や妖怪を抱きしめたことはないが。


柔らかくて……大切なコイツを、いつまでも俺だけが抱きしめられたらいいのに。


彼女を腕に抱いたまま、そうひとり思ったんだ。
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