地味子の秘密*番外編*
近くには、まな板の上に置かれたキャベツと包丁がある。

どうやら……野菜を切っていた時に、誤って指先まで切ってしまったらしい。


「樹里ちゃん大丈夫!?」

「うん、これくらい平気」


周りの女子達が、樹里を囲む中……ひとりの男子がアイツの手を掴んだ。


「えっ……橋本くん?」

「痛いんでしょ、ちょっと我慢してね」


そう言って、アイツの手を自分の口に持っていく。


……あんにゃろー。


橋本が何をするかわかった瞬間。

いや……それよりも前だったかもしれない。

ヤツが樹里に触れることに、イラついた瞬間……。


「キャア!?」


河西から離れて、アイツの胸の下辺りに腕を回して、自分の方へ引き寄せた。

樹里を後ろから抱きしめる。


「細菌入ったら大変だから、保健室連れて行くな」


そう周りに告げて、樹里と一緒に家庭科室をあとにした。
< 62 / 381 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop