地味子の秘密*番外編*
だけど、今年は違う。隣に、コイツがいるから。

杏からもらえるなら、絶対に食べる。

「う~ん……どれにしようかなぁ~?」

コイツは相変わらず、バレンタインの特集が書かれたページを見てた。

ちゃんとくれるんだろうか?

そっと見つめているとーーー……。


「ね、陸はどれがいい?」

――カサッ……

ニコニコと笑みを浮かべて、俺に聞いてくる。

藍鬼は、もうどこかに遊びに行ったのか、ここにはいなかった。

え? 直接好みを聞いてくれんの?

うわ……嬉しいかも!

彼女が、俺へのチョコについて聞いてくれたと思って、テンションが上がっていたのだがーーー。


「これと、これ! 雑鬼たちにはどっちがいいかな?」

「は?」

そう言うと、杏はプクッと頬を膨らませた。


「だ~か~ら! 学園にいる雑鬼のみんなにあげるチョコ! 陸はどっちがいいと思う?」

「……」


俺へのチョコの相談じゃなくて? 藍鬼たちへのチョコ? 

それを彼氏に聞くのか?

杏は、選ぶのが楽しいと言わんばかりに雑誌を見ている。


「えっとね? たくさんいるから、大量生産ができるものがいいんだけどさ……他にも、クラスのみんなにもあげたいし……」


はァ!? クラスのみんなぁぁあああ?

それって、俺の他にも男にあげるってことか?

冗談じゃねぇ!

「おい」

「ん?」

「なんでクラスの奴らにもやるんだよ?」


なんか、無性にイライラしてきた。

「え? だって、秋頃に色々と迷惑かけたからそのお詫びに……」

一瞬、キョトンとした表情になって、さらりと答えられる。

コイツの中では、俺がイラついている理由なんて考えてないんだろう。

ん~……杏の気持ちもわからなくはないが、他の男たちにもチョコをやるだなんて……。

……もらった奴ら、マジでムカつく。

こんなことを言ったら、独占欲が強いと思われるだろうけど、仕方がない。


ホントに、杏だけは他の奴らに渡したくないから。


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