地味子の秘密*番外編*
「ふーん、そうかよ。適当に、一口サイズのモノでもやれば」

イライラから、つい、そっけなく返してしまった。

俺へのチョコで悩むというわけじゃなくって、他の奴らに渡すチョコで悩むとか……。

考えるほどに、イライラは募る。

「陸? どしたの?」

「……別に?」

俺の異変に気付いたのか、顔を覗き込んで来た杏。

これ以上隣にいたら、イライラからコイツに当たってしまいそうだ。

小さなさくらんぼ色の唇を塞いで、制服を脱がせて、杏をメチャクチャにするまで、抱きたくなってしまう。

そうなる前に教室へ帰ろう……。

そう考えて、腰を上げる。


「え? 陸戻るの?」

キョトンとした顔で、立ち上がった俺を見上げてきた彼女。

「あぁ。また放課後な」

漆黒で、サラサラとした杏の髪を撫で、空き教室を出る。


「……俺って器の小さい男だよな」

教室への帰り道で、そうポツリと呟いた。



そして、あの地獄の一日がやってきた。

2月14日―――。

今日は、金曜日。

14日が、土日であれば、多少ラクなのに。

チョコを渡されるのが、金曜日と月曜日にわかれるからな。

家に持って帰る分も少なくて済むし……。



「陸の最高記録って、何個だったけ?」


朝、学校に向かう道のりを悠と一緒に歩いていたら、突然問いかけられた。


「さぁ? 300くらいだったんじゃね?」


去年、咲姉が数えていたし。


まー去年のこの時期は、色々とあったし……色んなところからもらったんだよな。


「今年は神崎さんがいるってわかってるんだから、少ないかもな」

「そうであることを願う」


悠も、小さい時からつるんでるから、俺のバレンタイン事情についてはよく知っている。

もらったチョコを運ぶを手伝ってもらったことがあった。
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