地味子の秘密*番外編*
祈るように手を合わせる俺を見て、隣にいるコイツはケラケラと笑っていた。

……もらい過ぎるのだって、辛いんだからな。

あ。そういえば―――。

「つーか、悠は松沢にもらったのか?」

「ん? あ~うん。昨日ね」

話を聞いていると、松沢は、「私が一番に悠にあげるんだから!」と言って渡してきたらしい。

う、うらやましい……。

俺なんて……。

悠の惚気話に、ダメージを受けていたら、それに気づいたヤツが聞いてきた。


「え? まだもらってない?」

「……」

「うっそ。神崎さんって、早めに渡してそうなのに」


悠のその言葉が、俺をさらにみじめにしていく。


「だってマジでアイツ……」

昨日あった出来事を思い出して、また凹んだ。

その出来事とは―――……。




明日が、バレンタインというわけで、学園中がピンク色に染まっている。

男たちも、チョコが欲しいという気持ちが大きいのか……。

2月のちょっと前から、女たちに対して優しくなっていた。

自ら掃除を引き受けたり、重いものを持ったりと努力を惜しまない。

よくやるなと思う。

そこまでして、欲しいのか?

しかし、バレンタイン前だということで俺の気分は降下中だった。

なぜなら・・・・・・。


「陸様! 陸様はどのようなチョコがお好きですか?」


同学年のヤツらが、俺へのチョコの質問に来るから。

1週間前になるころから、教室に色んな女たちがやって来ていた。

ウザイくらいに……。

だけど、そこは王子様という仮面を被ってきているからーーー。

「う~ん、そうだね、特にこれっていうのはないよ。僕は、もらえるだけで嬉しいから」
と、心にもないことを言ってしまっている。

本心はーーー・・・・・・・。

「杏以外からのモノなんていらねーから。つーか、お前らのチョコなんて毎年食ってねぇし?」

というもの。

仮面のせいで口に出すことはできないがーーー。

ハアアアア・・・・・・。

時々、この表の顔がイヤになる。

でも、仕方ねーよな。

自分で判断して始めたことだから。

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