地味子の秘密*番外編*
憂鬱な日々を送っていて、いざ、バレンタイン前日。

昨日も、昼休みは西棟で過ごしていた。

杏の手作り弁当を食い終わって、恒例の膝枕で昼寝。

ウザイ女たちから逃れられる唯一の時間でーーー。

「な~?こっからどうやるんだっけ?」

「ん?あ、えっとね~こうやって、こう回すの」

「サンキュ」

読書をしている杏の顔を見ながら、俺はコイツの髪で遊ぶ。

ただ今、みつ編みに挑戦中・・・・・・。

寝ころびながら、杏の長い髪の毛先だけを三つ編みにしていた。

俺が三つ編みのやり方を知らないと言ったら、杏が教えてくれたんだ。

コイツは、1分もあれば髪をふたつにわけて、三つ編みを作れる。

ま、10年以上も地味子をやっていて、毎日結っていたら、できるようになるよな。


「できた」

完成し、ほら、と言うように杏に見せた。

読んでいた本から顔をこちらの方に向ける。

「ホントだ、できるようになったね!」

俺が結った部分を見て、ニコッと笑いかけられた。

その柔らかい笑顔に、自然と胸の鼓動が速くなる。

ヤバい・・・・・・かわいすぎ。

キスしたい。

そう思ったら、もう行動に出ていて―――・・・・・・。


「んっ・・・・・・」

結った三つ編みの部分を引っ張り、顔を近づけさせると、小さな唇に口づけた。


人気のないこの西棟の3階には、俺らしかいなくて。

だから、誰かに見られるという心配もない。

静かな教室には、ボソボソと話す俺らの声しか響くものはなかった。

「な、5限目サボるか」

今、杏を食いたい。

「え!だ、ダメだよ!」

「なんで?」


――プチンプチン・・・・・・

――シュル・・・・・・


理由を聞きつつ、床に押し倒した杏のブレザーのボタンを外す。

ネクタイの結び目に指を引っかけて、解いた。
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