地味子の秘密*番外編*
「杏?もしかして、親父にもチョコやるつもり?」
問いかけると、キョトンとした表情になり―――……。
「うん!もうニューヨークに送ったよ?」
さらりと答えられた……。
彼氏じゃなく、彼氏の父親に贈るってどういうことだよ?
「なんで?」
「え?だってね、この前電話がかかってきて、ちょうだいって言われたから」
……あんのクソ親父!
今度帰って来た時には、締めてやる!
なんて、考えていたら。
「じゃあ、用件はそれだけだから」
そう言って、さっさと教室を出て行ってしまった。
残ったのは、弁当だけ。
「滝本っていつも神崎さんの手作り弁当なのか?」
「そうなんじゃね?マジ羨ましいんだけど!」
そんな男たちの声が聞こえる。
でも、俺は―――……。
「本当にチョコなしかも……」
朝よりも、気分は落ち込む一方だった。